どんな状況なら「セックスして当然」?
「二人きりでお酒を飲んだらその気がある」「デートでキスしたから、身体に触れてもOK」「家に行ったらセックスして当然」...こんな言葉を、耳にしたことはありませんか?
そもそも、「〜したらセックスして当たり前」というような暗黙の了解を、私たちはどこで学んだのでしょうか?
映画やドラマ、マンガを通して知ったことかもしれません。または、アダルトビデオなどを観て覚えたことかもしれません。でも、これらは全てフィクションの世界の話です。
現実では、「うまく行った」「スマートにリードできた」と思うスキンシップも、相手は不安や恐怖心、不快感などを抱えている可能性があります。本当の気持ちは、相手に聞いてみないと分からないことです。
例えば、下記のような状況を想像してみてください。
(例)終電を逃して、男友達の家に泊まることになったAさん。Aさんはそんなつもりじゃなかったのに、友達は急にキスを迫ってきて、腕や脚などを触られた。
この状況で身体を触られるのは、当然のことだと思いますか?イヤなら家に上がらなければよかったのに、と思いますか?でも、Aさんが承諾したのは「家に行く」ということだけ。性的なスキンシップをとることについては、だれもAさんの気持ちを確認していませんよね。
性的なスキンシップを取りたいと思った人が、相手の気持ちを確かめないままに行うこのような行為は「性暴力」と考えられます。
「どうして?」「大げさじゃない?」と思う人もいるかもしれません。次は、こういった行為がどうして「性暴力」に当たるのかということを一緒に考えていきます。
どうして気持ちを聞く必要があるの?
どうして、気持ちを確認せずに相手の身体に触れてはいけないのでしょうか?例え、アクションを起こした人に悪気がなかったとしても、なぜそれが「性暴力」と考えられるのでしょうか?
キスやセックスなど、性的なスキンシップをとる際に覚えておきたいルールがあります。それが、「性的同意」。
聞き慣れない言葉かもしれませんが、これは「性的なスキンシップをとる際には、必ずお互いがその行為を積極的に『したい』と思っているか確認する必要があるよ」というものです。
性的同意は、お互いのココロと身体を思いやるために欠かせないもの。相手との関係性に関わらず、いつ、どんなときも必要だということを覚えていてください。
【性的同意が大切な理由】
1.人の身体はその人自身のものだから
自分が「どうしたいか」を決めるのは、その人自身が持っている権利です。
ひとつしかない大事な身体を、本人の許可なしに触ったり、好き勝手に利用したりすることは、その人が「どうしたいか」決める権利を奪っているということ。これは、その人のココロと身体を傷つける暴力なのです。どんなときも、お互いが持っているこの権利を尊重しあいましょう。
2.性行為はココロにも身体にも大きな影響を与える行為だから
性行為がココロと身体に与える影響は、さまざまです。愛情表現や快感といったポジティブな影響だけではありません。予期しない妊娠や性感染症への感染、望まない行為をしたことによる精神的なショックなど、ネガティブな影響を与えることもあります。だからこそ、お互いが安心して体験を共有できるよう、思いやりを忘れないことが大切なのです。
なお、性的同意を確認する責任は、アクションを起こしたいと思った人にあります。そして、確認をとられた側は、どんな状況でも、YES・NOを自由に表現する権利があるということを、覚えておきましょう。
パートナーとのコミュニケーションについて
「性的同意」って知ってる?お互いを思いやるための大切なコミュニケーション
2021/7/24
性的同意チェックリスト
といっても、「性的同意が要らないときもあるんじゃない?」と思う人もいるかもしれません。
ここで少し、考えてみてほしいことがあります。
下記の行動・状況の中で、あなたが今までキスやセックスのOKサインだと判断していたことや、「これはOKサインだと思われても当然だよ」と感じるものに、チェックを入れてみてください▼
いくつチェックがつきましたか?
実は、このリストに書かれたことは、どれも「OKサイン(性的同意)」とは言えません!
それはどうしてなのか、ここから詳しく解説していきます。
チェックリストを解説!
何らかのスキンシップがあった
▢手をつないだ
▢顔や髪に触れた
▢キスをした
手をつないだり、キスをしたりといった行為は、それ自体に同意が必要なものです。
ここで伝えたいのは、そういったスキンシップがあったからといって、他の行為にもOKサインを出していることにはならない、ということ。
性的なスキンシップは、たくさんのステップの連続です。「キスはOKしたけど、身体に触れられるのはイヤだった」ということもあるでしょう。
次のステップに進みたいと思ったり、違う触れ合い方をしたいと思ったりしたときには、「~しても大丈夫?」「ここ触ってもいい?」など、その都度相手の気持ちを確認することが大切。そうすることで、きっとお互いの安心感も増すはずです。
相手の様子や、お互いの関係性
▢露出の多い服装をしている
▢家で二人きりになった
▢酔っぱらっている
▢眠っている・意識がない
▢パートナーや夫婦同士
▢今までにセックスをしたことがある関係
「パートナーや夫婦同士なら、いちいち気持ちを聞かなくていい」と思っている人もいるのではないでしょうか?
性的同意は、パートナー間であっても、常に必要なものです。
付き合っていても、結婚していても、その人の身体はその人自身のものであることは変わりません。
「露出の多い服装をしていたから」「家で二人きりになったから」キスやセックスして当然、というのは大きな間違いです。服装と、性的スキンシップに対する気持ちは関係ありません。また、二人きりになることが、身体に触れていいという意思を表している訳ではありません。
なお、酔っぱらっていたり、眠っていたりする人は、自分で決断したり、意思を伝えたりするのが難しいと言えます。性的なスキンシップをとりたいと思ったら、相手の意識がはっきりしているときに気持ちを聞きましょう。
はっきりNOと言っていない
▢YES・NOがあいまい
▢迷っている
▢何度も迫った結果のYES
上記のような場合は、相手は積極的に「したい」と思っているでしょうか?
性的同意は、はっきりした「YES(したい)」があって初めて同意を意味します。「NO(イヤ)」と言わないことが、同意を意味していることにはなりません。
プレッシャーや恐怖心などから、はっきり「NO」と言えないこともあります。
相手が迷っている場合や、YES・NOがあいまいな場合は、「したくない」気持ちがあることを尊重しましょう。
状況だけで判断せず、お互いの気持ちを確かめよう
相手の気持ちは、その場の雰囲気や状況、相手のしぐさだけでは判断できません。アクションを起こしたいと思ったら、必ず相手の気持ちを聞くようにしましょう。
とはいえ、「ムードを壊したくない」「恥ずかしい」などの気持ちから、積極的にコミュニケーションをとるのが難しいと感じることもあるかもしれません。そんなときは、お互いがやりやすい形でコミュニケーションのとり方を工夫してみてはいかがでしょうか?
お互いが気軽に使えるキーワードや合図を考えてみたり、LINEやDMで気持ちを伝えてみたり...。
詳しくは、下記の記事を参考にしてみてくださいね!
パートナーとのコミュニケーションについて
誰も教えてくれない「性的同意のとりかた」:アクションを起こしたいときのアイデア4選
2021/10/27
性的同意をとられずモヤモヤしたことがある人へ
ここまで読んでみて、「あのとき自分は性暴力を受けていたかもしれない」と、ふと思った人もいるかもしれません。性的同意を確認されず、不安やモヤモヤを感じたことがある人に向けて伝えたいことがあります。
まず伝えたいことは、「被害にあったあなたは悪くない」ということです。望まない性的なスキンシップや言動は、全て「性暴力」と考えられます。
もし、チェックリストに書いてあるような状況で性暴力の被害にあったとしても、どうか自分を責めないでください。お互いの関係性や、その場の状況に関わらず、性的同意を確認する責任は、アクションを起こしたいと思った人にあります。もっと抵抗すればよかった、早く逃げればよかった...などと、考えなくて大丈夫です。
残念ながら、性暴力についての理解や認識はまだまだ不足しているのが現状です。「酔っぱらっていたから」「そんな服を着ていたから」と被害者が責められたり、「恋人同士なんだから」と受け流されたりすることもあります。
そして、このような状況では、助けを求めにくいと感じることもあるかもしれません。
でも、被害にあったとき、あなたが必要な助けを見つけられる場所は、きっとあるはずです。
少しでも「おかしいな」と思ったら、一人で抱え込まず、下記のような相談窓口に一度相談してみてくださいね。
【全国の相談所】
パートナーとのコミュニケーションについて
あなたは大丈夫?「束縛」や「スマホチェック」など意外と身近なデートDVについて
2021/12/29
まとめ
いかがでしたか?リストの中には、無意識のうちに「キスやセックスのOKサイン」と思っていたことがあったかもしれません。
相手の気持ちは、お互いの関係性や、その場の状況だけで判断することはできません。アクションを起こしたいと思ったら、必ず相手の気持ちを聞きましょう。お互いが積極的に「したい」と思える行為を、安心してできることが、心地いいスキンシップに繋がるはずです。
気持ちを積極的に聞きにくい、YES・NOをはっきり言いにくい...という場合は、関連記事を参考に、お互いが伝えあいやすいコミュニケーション方法を見つけてみてくださいね!
自分の状態を相談したい場合は?
不安なこと、お悩みを薬剤師・助産師に直接相談することができます。
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