【執筆】スマルナ編集部
mimosas(ミモザ)は弁護士、臨床心理士、助産師といったさまざまな分野の専門家と共に性暴力や、性的同意に関する知識を発信するメディア。「知ることで変えられる未来がある」をビジョンに、SNSでの発信や中高生向けのハンドブック無料配布、アート作品を用いたトークイベント、オリジナルグッズ販売などを通して啓発活動を行っている。
こんな経験ありませんか?
今まで、下記のような経験はありませんか?
- パートナーから力づくで性的な行為をされた
- パートナーにこっそり性的な写真や動画を撮られた
- 友人に無理やりキスをされた
- 頼んでも避妊具をつけてくれない、途中ではずされた
- 職場の人に身体を触られてイヤな思いをした
- 通学中の電車内で痴漢にあった...etc
これらは、全て「性暴力」に当てはまる行為です。
相手との関係性や、その場の状況に関わらず、あなたが望まない性的なスキンシップや言動は、すべて「性暴力」と考えられます。
※内閣府の調査では、(女性が異性から受けた)性暴力被害の8割近くが、パートナーや同僚など面識がある人によるものと報告されています。
参考:「男女間における暴力に関する調査」内閣府男女共同参画局(平成20年度調査)
被害にあったとき、心身に起こる反応はさまざまです。ココロの反応としては、悲しい・怖い・恥ずかしい・絶望・混乱・ショックで何も感じられない...など。
どうしたらいいか分からなかったり、「とにかく早く忘れたい」と思ったりすることもあるでしょう。また、今後の人間関係への影響や、加害者からの仕返しなどが不安で、助けを求めにくいと感じることもあるかもしれません。時には、自分の混乱を落ち着かせるために冷静になりすぎてしまったり、つらい気持ちに蓋をしてしまうこともあります。
ですが、あなたのココロと身体を守るために、受けられるサポートやケアがあります。
この記事では、性暴力にあったときどうしたらいいか、いくつかの選択肢をご紹介します。
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被害にあったあなたは悪くない
相談先などの紹介に入る前に、まず伝えておきたいことがあります。
それは、「被害にあったあなたは悪くない」ということです。
あなたが今、「自分にも原因があった」「自分が〜しなければよかった」と少しでも思っているとしたら、どうか自分を責めないでください。
どんな形であれ、責任は暴力をふるう側にあります。あなたは何も悪くありません。
性暴力は、ココロと身体を深く傷つけます。どんな状況であれ、許されない行為です。
つらい思いや、言葉にできないような苦しい気持ちを抱えている人もいるかと思います。
私たちはみんな、自分の身体や性的なことに関して「どうしたいか」を決める権利を持っています。性暴力は、この権利を侵害するものです。
「自分が悪かったから」と、つらい気持ちを我慢しなくて大丈夫です。いつでも助けを求めていいのです。あなたには、その権利があります。このことを心に留めて、読み進めてもらえたら嬉しいです。
安全な場所に移動しよう
あなたの命や、身体に危険はありませんか?性暴力の被害にあったとき、まず大事なのはあなたの安全確保です。
できるだけ早く、あなたが安全だと感じられる場所に避難しましょう。
もしも、加害者に居場所を特定されていたり、何らかの形で脅されたりしている場合は、迷わずに警察や、ワンストップ支援センターに連絡してください。下記は、全国共通の番号です。
【警察】
- 性犯罪相談電話は #8103(ハートさん)
- 警察相談専用電話は #9110
- すぐに警察に駆けつけてほしい場合は #110
【ワンストップ支援センター】
- #8891(はやくワンストップ)
ワンストップ支援センターへの相談については、このあと詳しく説明していきます。
ワンストップ支援センターに相談しよう
安全が確保できたら、ワンストップ支援センターに相談し、どんな対応をしたらいいか聞いてみましょう。
ワンストップ支援センターとは、被害直後からの総合的な支援を提供する窓口のことです。あなたの気持ちや希望を聞きながら、一緒に対応方法を考え、必要なサポートを提供してくれます。
だれかに相談することに、さまざまな不安や怖さを感じることがあるかもしれません。
覚えておいてほしいことは、あなたのプライバシーは守られるということ。
相談した内容や個人情報が漏れることはありませんし、ワンストップ支援センターから勝手に警察などに連絡することもありません。
証拠をできるだけ保存しておくために、お風呂に入ったり、着替えたりする「前に」相談することが大切です。状況によって難しい場合や、すぐに身体を洗いたいと思うことがあるかもしれません。ですが、こうした証拠をとっておくことは、今後「警察に相談したい」と思った際にとても重要になります。
【ワンストップ支援センターで受けられる主なサポート】
※各センターによって、提供している支援内容は異なります。
- 提携医療機関の紹介と受診のサポート(アフターピルの処方や妊娠・性感染症の検査など)
- 医療機関などでココロと身体の必要な治療・ケアを受けるサポート
- 警察への相談・証拠提出などのサポート
- 弁護士などと連携しながら、法的な手続きのサポート
あなたの気持ちを優先したサポートが行われるので、安心してくださいね。
なるべく早く医療機関を受診しよう
ワンストップ支援センターに連絡すると、提携している医療機関を紹介してもらうことができます。
なるべく早く受診し、アフターピルの処方や性感染症の検査など、必要な処置を受けるようにしましょう。
※提携の医療機関を受診する場合は、基本的に医療費が公費負担になります。
一人での受診が不安なときは、ワンストップ支援センターの人が受診に付き添ってくれる場合もあります。受診をためらう気持ちがあるときは、ワンストップ支援センターに一度相談してみてくださいね。
【提携の医療機関で受けられる主な処置】
- アフターピルの処方
- 性感染症の検査
- 薬物の検査
- 診察を通した証拠採取(加害者のDNAなど)
場合によっては、たとえ避妊具を利用していたとしても妊娠や性感染症のリスクがあります。望まない妊娠の可能性がある場合、その行為の72時間以内に「アフターピル」を服用した方がよいとされています。
十分な避妊効果を得るためには、早めの受診が大切です。※ただし、72時間を超えてからも120時間以内であれば一定の避妊効果はあるので、そこで諦めずに相談することをおすすめします。
なお、「被害時の記憶がない・記憶がぼんやりしている」「身体がうまく動かなかった」などの場合は、睡眠薬等の薬(レイプドラッグと呼ばれるもの)が使われていた可能性があります。
薬の種類や量によって異なりますが、体外に排出されるまでの期間はだいたい「数時間〜3日前後」と言われています。証拠を採取するためにも、できるだけ早く尿検査や血液検査を受けましょう。
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証拠をとっておこう
加害者に対して法的な処罰を望む場合は、証拠を保管しておきましょう。
逮捕などに繋げるためには、まず警察に「被害届」を出し、事件の状況を伝えて証拠を提出する必要があります。
※ただし、警察に被害届を出すか出さないかは、あなたが選べることです。
警察に相談するか迷っている場合も、証拠は保存しておくのがおすすめです。
被害にあった直後は、「大ごとにしたくない」「なかったことにしたい」という気持ちを抱くこともあると思います。
でも、時間が経って「やっぱり警察に届けたい」「何かしておけばよかった」と思うときがくるかもしれません。アクションを起こしたいと思ったとき、できることの選択肢を残しておくことは大切と言えます。
【証拠の保存についてのポイント】
- 医療機関などで検査を受けるまで、なるべく身体は洗わない
- 被害にあったとき着ていた服や下着は、洗濯せずに保管しておく(紙袋などに入れて保管)
- 加害者が使ったコンドームなどを保管しておく
- 加害者とのSNSやLINEでのやりとりなど残しておく...etc
警察への相談に対して、高いハードルを感じることもあるかと思います。でも、あなたが行動を起こしたいと思ったときには、ワンストップ支援センターなど専門窓口の人が力になってくれます。一人で全てを背負わなくて大丈夫です。
※なお、警察に相談をした上で、被害届を出さないという選択肢もあります。仮に証拠がなくても、ひとまず警察に相談しておくことは可能です。
被害から時間が経っても相談できる
「証拠が何も残っていない」「被害から時間が経っている」という場合でも、ワンストップ支援センターなどの専門窓口に相談することができます。
専門窓口では、カウンセリングや弁護士の紹介など、心身のケアや法的な手続きであなたが必要なサポートを受けられることがあります。
また、被害の記憶がよみがえって気分が悪くなったり、不安や恐怖で眠れなかったりというときに、あなたの話を聞いてくれる窓口もあります。
あなたは決して一人ではありません。
少しでもモヤモヤしたり、つらい気持ちになったりしたら、気軽に相談してみてくださいね。相談先については、下記の記事で詳しくまとめています。
パートナーとのコミュニケーションについて
「これってDV?性暴力?」困ったときの相談先一覧
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ココロと身体への影響について
性暴力は、大きなトラウマを残すものです。被害後、心身ともにさまざまな変化があるかもしれません。
今までの自分とは違う感情を抱くようになった、と思うこともあるかもしれませんが、こういった変化は被害を受けた多くの人が経験するものです。
このような問題は、一人で対処するにはとても負担が大きく、日常生活に支障をきたすこともあります。
あなたが自分のココロと身体を大切にしながら、一日一日が少しでも生きやすくなるよう、必要な助けを見つけてみてくださいね。
まとめ
その場の状況や、相手との関係性に関わらず、被害にあったあなたは悪くありません。
混乱したり、何も感じられなくなったり...被害にあったときやそのあとに感じる気持ちはさまざまです。今後の人間関係などが不安で、助けを求めにくいと感じることもあるかもしれません。
ですが、あなたの安全を守るために、受けられるサポートやケアがあります。どうしたらいいかわからない時や、困ったときは、一人で抱え込まず、まずはワンストップ支援センターなどの専門窓口に相談しましょう。
あなたがひとりで抱えなくても良い方法は、きっとあります。参考にしてみてください。
自分の状態を相談したい場合は?
不安なこと、お悩みを薬剤師・助産師に直接相談することができます。
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